2020年08月12日
AERAから抜粋
新型コロナウイルスの治療薬の開発が世界中で期待されているが、中国では武漢での流行初期から、感染患者に漢方薬を用いて重症化を抑えたという。
4月17日、北京中医薬大学王偉副校長は国務院での記者会見で、「清肺排毒湯は新型コロナウイルス感染症の特効薬だと考えている。国内外の研究者が他の治療方法と比較研究することを歓迎する」と述べている。
日本では、こういった漢方薬は用いられないのだろうか。
「日本ではPCR検査で陽性と診断されたら、隔離されますが、隔離先の大きな病院ではほぼ漢方薬は処方されないでしょう。医療従事者の多くが西洋医学に基づいて診療しており、漢方という選択肢がないからです」
そんななか、日本でも一部の医療者は中国の対応に注目し、清肺排毒湯を処方する医師もいたようだ。日本感染症学会のホームページには、2月以来、新型コロナ感染症に対する中国のガイドラインの日本語訳が掲載されている。そこには清肺排毒湯についても記されている。
「コロナ流行初期のころ、37度5分以上が4日以上続かないと検査が受けられなかった時期に、そういう患者さんを診たことがあります。おそらく漢方専門医のなかには清肺排毒湯を使ったり、参考処方で治療した医師がいる可能性があります」
現在、日本東洋医学会は、「COVID-19一般治療に関する観察研究ご協力のお願い」という告知をホームページに掲載している。軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症患者(疑いも含む)に対する、西洋薬、漢方薬治療による症状緩和、重症化抑制に関する多施設共同の観察研究への協力のお願いだ。
新型コロナの第2波への備えが注目されるが、今後、別の新たな感染症が流行することも想定しておかねばならない。その対処法の一つとして、西洋医学だけでなく漢方も選択肢に入れておくべきで、漢方専門医の育成も重要になってくると伊藤医師は強調する。
「現在、日本に30万人いる医師の中で、日本東洋医学会が認定する漢方専門医はわずか2千人程度です。より多くの医師が漢方医学の学習をされて対応できるようになることが望まれます」
永井医師はこう話す。
「医学部における漢方教育は少しずつ進んでいますが、医師国家試験に漢方の問題が出ていないため、漢方の普及は望めません。和漢薬という日本の宝を持ちぐされにするのは残念です。今回のコロナを機に、新しい医療体系を模索すべきです」